違和感から始まった出会い
「最初は、そんなに感動しなかったんです(笑)」
そう語るのは、ハートグローバル八王子リーダーの熊谷さん
世界各国から集まったキャストが、わずか3日間で子どもたちとミュージカルを創り上げる教育プログラム「ハートグローバル」
保護者として初参加した当時の熊谷さんは、実は懐疑的でした
「全部英語のイベントだと思っていたのに、日本語も交えて進行している。参加費も安くはない。正直、“これって教育的にどうなんだろう?”と感じていました」
しかしその違和感は、後に確信へと変わります
元国語教師が見た、日本の教育との決定的な違い
熊谷さんは元高校国語教師
だからこそ見えた違いがありました
学校が「答えを与える場」だとすれば、ハートグローバルは「自分で選ぶ場」
ワークショップでは、「好きなキャストを選んでいいよ」と言われます
誰に教わるかを自分で決める。それだけで、子どもの目の色が変わる
指示待ちではなく、自己選択
自由と責任が同時にある環境
「学校では難しかった“個の爆発”が、ここでは自然に起きるんです」音楽、ダンス、アート
表現を通して子どもが解放される瞬間を、何度も見てきました


「プロより上手」ではなく、「本気」が心を動かす
創設者ビル&ロビン ブローリー氏に、熊谷さんは尋ねたことがあります
なぜここまで人の心を動かすのか
返ってきた言葉は明確でした
「私たちが届けたいのは音楽ではない。人なんだ」
キャストは全員がプロではありません。しかし全員が全力です
目の前の子どもに、本気で向き合う
否定しない
受け止める
この活動の精神を象徴するのが
「Yes, and」
まず「Yes」で受け止める
そして「and」で重ねる
否定されない空気の中で
子どもは一歩前に出る
その小さな一歩を、全員で祝福する
アートに言葉はいらない
地域サポーターの大塚さんも、活動に魅了された一人。
美術系出身のインテリアデザイナーである彼女は、かつて言葉の通じない異国で暮らし必死に身振りで伝えた日々
そのとき初めて、「伝えることの本当の意味」を肌で知りました。
「アートに言葉はいらない。ボディーランゲージは国境を静かに越えていく」
「勉強と同じくらい、いや、それ以上に大切なことがある」
それが、“表現する力”
ハートグローバルは、まさにその体験の場でした
その確信を胸に、母として関わり始めて11年。小1で初参加した娘は高2になり、今は親子でこの場を謳歌しています。かつて「連れて行かれる側」だった娘の成長と、それを支える母。二人の歩みにとって、この活動は豊かな時間を積み重ねる「地層」そのものとなっています。
【写真】左から熊谷奏子さんと大塚祐子さん


見えない一年間の土台づくり
当日のステージの裏には、一年間の準備があります
ロビー活動、各種ミーティング、練習、スポンサー調整、広報活動
それらを支えるのがキャスト、地域サポーター、キッズサポーター
全員で開催当日と、その土台をつくっています
地域開催を支えるのは個人ではなくチーム
地域サポーターは“誰かを支える存在”ではなく、開催そのものを支える存在です
ホストファミリーという“日常の国際交流”
熊谷さんが決定的に変わったのは、キャストをホストファミリーとして迎え入れたことでした
「家に世界がやってきた感覚でした」
言葉が完璧に通じなくても、一緒にご飯を食べ、笑い、語る
キャストは“出演者”ではなく、家族の一員になります。パンフレットの文字に血が通い始める。「この子たちのために、自分は何ができるか」そう自然に思えるようになるのです
子どもの変化は、親の想像を超える
初日は親の後ろに隠れていた子が、3日目には笑顔でステージに立つ
最後には、「またね!」とキャストにハグをする
その変化を見て、保護者の納得度はほぼ100%に近づくといいます
逃げてもいい。でも、必ず誰かが待っている
その絶対的肯定感が、子どもの自己肯定感の土台になります
八王子で世界と出会う
ハートグローバルの運営は有志のボランティアスタッフとじぶん未来クラブの職員の皆さんによって支えられています
資金集めも、集客も、簡単ではありません
それでも続ける理由
「遠くに行かなくても、八王子で世界に出会える場所をつくりたい」
国際交流は、海外に行くことではない。人と出会うこと
音楽を届けたいのではない。届けたいのは“人”
届けたいのは、本気で向き合う“人”
その出会いが、子どもたちの未来に静かに根を張、二年分の熱い想いを乗せて、大盛況のうちに幕を閉じました。