この記事でわかること
- 二十四節気「穀雨(こくう)」の意味と時期
- 穀雨の頃に起きる自然の変化(葭の芽吹き・霜止み・牡丹の開花)
- 旬の食材:山菜(たらの芽)の苦味の理由と、初がつおの豆知識
- 八十八夜と新茶のつながり
「穀雨」とは。春の雨が穀物を育てる頃のこと

清明が過ぎて、次にやってくる節気が「穀雨(こくう)」です。
語源は「雨生百穀(うりゅうひゃっこく)」
春の雨が百の穀物を生む、という意味。 この時期に降るやわらかな雨は、田畑に水分と栄養を届け、種まきや苗の成長を助けてくれます。
穀雨は、二十四節気のなかで春の最後の節気。 この節気が終わると、暦の上では「立夏」。春から夏へ、季節のバトンがそっと渡される頃です。
2026年の穀雨は4月20日(日)〜5月4日(月)。次の「立夏」は5月5日(月・こどもの日)から始まります。
この頃、自然はこんなふうに動いている

穀雨の七十二候は、この3つ。
| 七十二候 | 読み | 意味 |
|---|---|---|
| 葭始生 | あしはじめてしょうず | 水辺の葭(あし)が芽を出しはじめる |
| 霜止出苗 | しもやみてなえいずる | 霜が降りなくなり、苗がすくすく育つ |
| 牡丹華 | ぼたんはなさく | 「百花の王」牡丹が咲きはじめる |
清明のときはツバメが来て、雁が帰っていく「渡り鳥の交差点」でした。 穀雨になると、自然の主役は空から大地へ。芽が出て、苗が育ち、花が咲く、地面が動き出す季節です。
穀雨は、空からの恵みが大地にかたちを変えて届く頃。
穀雨に届く旬の味、山菜と初がつお

穀雨の食卓は、春の味覚が最後にぎゅっと集まる、にぎやかな時期です。
たらの芽:春の「苦味」には理由がある
山菜の王様とも呼ばれるたらの芽。天ぷらにしたときのほろ苦さと香りは、春を感じる味の代表格です。
この苦味の正体は、ポリフェノールの一種。
体にもとても良いとされており、春の山菜を食べることは、体を冬モードから春モードに切り替えるスイッチのようなものなんです。
山菜の苦味は「体を目覚めさせる合図」。たらの芽のほかにも、ふきのとう、こごみ、うどなど、穀雨の頃はさまざまな山菜が旬を迎えます。天ぷらやおひたしで、春の苦味をたのしんでみてください。
初がつお:「目には青葉」の季節
穀雨から立夏にかけて、もうひとつの旬が初がつお。
江戸時代の俳人・山口素堂の有名な句に、こんなものがあります。
「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」
目には初夏の青葉が映り、耳にはほととぎすの声が届き、口には初がつおの味が広がる──視覚・聴覚・味覚で季節を感じた、なんとも贅沢な一句です。
初がつおは、南の海から北上してくる「のぼり鰹」。脂は控えめですが、身が締まっていてさっぱりとした味わいが特徴です。薬味をたっぷりのせたたたきで食べるのが、この時期ならではの楽しみ方。
ちなみに秋に南下する「戻り鰹」は脂がたっぷり。同じ魚でも季節によって味わいがまったく違うのは、旬の野菜の記事でも紹介した「時期によって中身が変わる」ことと通じる話ですね。
穀雨の終わりに届く、もうひとつの旬。八十八夜と新茶

穀雨の期間中に、もうひとつ大きな暦の節目があります。 八十八夜(はちじゅうはちや)
立春から数えて88日目にあたる日で、2026年は5月2日(土)です。
「夏も近づく八十八夜〜」の歌でおなじみですが、この日は古くから茶摘みの目安とされてきました。 八十八夜に摘まれる新茶は「一番茶」とも呼ばれ、冬の間にじっくり蓄えた栄養と旨味がぎゅっと詰まっています。
「八十八夜の新茶を飲むと長生きする」という言い伝えがあるほど、昔から縁起のいいものとされてきたんですね。
穀雨が終わると立夏。春の最後に届く新茶は、「春のおわり」と「夏のはじまり」をつなぐ一杯。お茶屋さんで新茶を見かけたら、季節の節目を味わうつもりで手にとってみてください。
春の終わりは、夏のはじまり

穀雨は、春がそっと幕を引く節気。 恵みの雨が大地を潤し、山菜の苦味が体を起こし、初がつおが食卓に届き、新茶の香りが夏の気配を連れてくる。
暦を知ると、ただの雨の日も「穀物を育てる雨なんだ」と思えるようになるし、スーパーで山菜を見かけたときに「体を切り替える季節だな」と感じられるようになる。
がんばって覚えなくていい。ただ、知っているだけで、季節がちょっとだけ近くなります。